だった。彼女はその金の計算報告はいつもしないでよかったのである。
 ファンティーヌはその地で女中奉公をしようと思って、家から家へと訪ね回った。が、だれも彼女を望まなかった。彼女はそれでも町を去ることができなかった。彼女に道具を、しかも随分ひどい道具を売りつけた古物商は、彼女に言っていた、「もしお前が逃げだしたら泥坊だとして捕縛してもらうだけだ。」室代のたまってる家主は彼女に言っていた、「お前は若くてきれいだ、払えないことがあるものか。」彼女は五十フランを家主と古物商とにわけ与え、なお古物商には道具の四分の三を戻して必要のものだけしか残しておかなかった。そして彼女は仕事もなく、籍もなく、ただわずかに寝る所があるきりで、しかもなお百フランほどの借りがある身となった。
 彼女は衛戌兵《えいじゅへい》の粗末なシャツを縫い初め、日に十二スーだけ得ることになった。が、娘の方へだけでも十スーずつはやらねばならなかった。彼女がテナルディエへ送金を遅《おく》らしはじめたのはこの時だった。
 けれども、晩に家に帰ってくるといつも燈火《あかり》をつけてくれる年取った一人の婆さんが、彼女に貧困のうちに暮らして
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