ュルヴァン老人自身も言った。「マドレーヌさん、およしなさい! 私はどうせ死ぬ身です、このとおり! 私のことはかまわないで下さい! あなたまでつぶれます!」しかしマドレーヌは答えなかった。
 そこにいる人々は息をはずました。車輪はやはり続いてめいり込んでいた。そしてもうマドレーヌが車の下から出ることはほとんどできないまでになった。
 突然人々の目に、その車の大きい奴が動き出し、だんだん上がってき、車輪は半ば轍《わだち》から出てきた。息を切らした叫び声が聞えた。「早く! 手伝って!」マドレーヌが最後の努力をなしたのだった。
 人々は突き進んだ。一人の人の献身がすべての者に力と勇気とを与えた。荷馬車は多数の腕で引き上げられた。フォーシュルヴァン老人は救われた。
 マドレーヌは立ち上がった。汗が流れていたが青い顔をしていた。服は破れ泥にまみれていた。一同は涙を流した。その老人は彼の膝に脣《くちびる》をつけ、神様と呼んだ。彼は幸福な聖い苦難の言い難い表情を顔に浮かべていた、そしてジャヴェルの上に静かな目付きを向けた。ジャヴェルはなお彼を見つめていた。

     七 パリーにてフォーシュルヴァン
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