。」
一群の中で動く者はだれもなかった。
「十ルイ出す。」とマドレーヌは言った。
そこにいる者は皆目を伏せた。そのうちの一人はつぶやいた。「滅法に強くなくちゃだめだ。その上自分でつぶされてしまうかも知れないんだ。」
「さあ!」マドレーヌはまた言った、「二十ルイだ!」
やはりだれも黙っていた。
「やる意志が皆にないのではない。」とだれかが言った。
マドレーヌ氏はふり返った、そしてジャヴェルがそこにいるのを知った。彼はきた時にジャヴェルのいるのに気がつかなかったのである。
ジャヴェルは続けて言った。
「皆にないのは力だ。そんな車を背中で持ち上げるようなことをやるのは、恐ろしい奴でなくてはだめだ。」
それから彼は、マドレーヌ氏をじっと見つめながら、一語一語に力を入れて言った。
「マドレーヌさん、あなたがおっしゃるようなことのできる人間は、私はただ一人きりまだ知りません。」
マドレーヌは慄然《ぞっ》とした。
ジャヴェルは無とんちゃくなようなふうで、しかしやはりマドレーヌから目を離さずにつけ加えた。
「その男は囚人だったのです。」
「え!」とマドレーヌは言った。
「ツーロンの徒刑
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