ちから突然伏兵の立つように現われて来るのであった。
暇とてはめったになかったが、もし暇があれば彼は、書物はきらいではあったが、それでもなお何か読んでいた。してみれば、彼はまったくの無学ではなかったらしい。またそれは彼の言葉のうちの一種の大げさな調子でもわかることだった。
彼が何らの悪徳をも持たないことは、前に言ったとおりである。自ら満足に感じてる時には一服煙草を吸うことにしていた。そこだけが彼の普通の人間らしいところだった。
たやすく察せらるるとおり、ジャヴェルは、司法省の統計年鑑のうちに無頼漢[#「無頼漢」に傍点]と朱書せられてる一種の階級からは非常に恐れられていた。ジャヴェルという名は彼らを狼狽《ろうばい》さした。ジャヴェルの顔は彼らを縮み上がらした。
この恐ろしい男は上述のとおりの者であった。
ジャヴェルは絶えずマドレーヌ氏の上に据えられてる目のごときものだった。疑念と憶測とに満ちた目だった。マドレーヌ氏もついにそれを気づくようになった。しかし彼は別に何とも思っていないらしかった。ジャヴェルに一言の問いをもかけず、またジャヴェルの姿をさがすでもなく避けるでもなく、その気
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