見て口善悪《くちさが》ない人々は言った。「金もうけをたくらんでる豪気な男だな。」ところが自分で金をためる前にその地方を富ましてやってるのを見て、彼らはまた言った、「ははあ野心家だな。」そのことがある点まで当たってるらしく思われた事には、彼は宗教を信じていて、当時いいこととせられていた教義を守ることをある程度まで行なっていた。彼は日曜日には必ず低唱|弥撒《ミサ》を聞きに教会へ出かけて行った。いたる所に競争心をかぎつけるその地方の一代議士は、やがて彼の信仰に不安を覚え出した。その代議士はもと帝政時代に立法部の一員であって、彼がその子分であり友だちであったオトラント公、すなわちフーシェという名前で世に知られているオラトアール派の一長老と、宗教上の意見を同じくしていた。内々で彼は神のことをそれとなく笑っていた。しかし金持ちの工場主マドレーヌが七時の低唱弥撒に行くのを見て、自分の競争者が現われたように思い、マドレーヌに打ち勝とうと決心した。彼はゼジュイット派の牧師を懺悔《ざんげ》聴聞者に選び、大弥撒や夕の祈祷などに出かけて行った。当時の野心なるものは文字どおりに鐘楼への競争であった。そういう警戒
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