だけだった。モントルイュ・スュール・メールは兵営のある町で、風俗の乱れる機会が非常に多かったので、なおいっそう彼は厳格だったのである。とにかく彼がそこにきたことは一つの恩恵であり、彼がそこにいることは天の賜物であった。マドレーヌさんが来る前までは、その地方はすべてが萎靡《いび》していた。が今ではすべてが労働の聖《きよ》い生命に生き上っていた。盛んな活動がすべてのものをあたため、またいたる所に流れ入っていた。仕事の欠乏や困窮はもう知られなかった。いかなる粗末な蟇口《がまぐち》の中にも金のないことはなく、いかなるあわれな住家にも何らかの喜びのないことはなかった。
マドレーヌさんはいかなる人をも使った。彼はただ一つのことをしか要求しなかった、すなわち正直な人たれ! 正直な娘たれ!
前に述べたとおり、マドレーヌは自らその原動力であり中心であった活動のうちにあって、財産を作ったのだった。しかし単なる商人としてはかなり妙なことであるが、何だか金を得ることが彼の主な意図であるようには見えなかった。他人のことのみ多く考えて自分のことはあまり考えないようだった。一八二〇年には、ラフィット銀行へ自分の
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