ょうろう》がなければ、僕はアメリカの草原を喜ぶ。わが魂は人跡いたらぬ森林と広漠《こうばく》たる草原とに飛ぶ。万物みな美である。蠅《はえ》は光のうちを飛び、太陽に蜂雀《ほうじゃく》はさえずる。わが輩を抱け、ファンティーヌ!」
 そして彼はまちがえてファヴォリットを抱いた。

     八 馬の死

「ボンバルダよりエドンの方がうまいものを食べさせるわ。」とゼフィーヌが叫んだ。
「僕はエドンよりボンバルダの方が好きだ。」とブラシュヴェルは言った。「こっちの方がよほど上等だ。よほどアジアふうだ。下の部屋を見てみたまえ。壁にはグラス(鏡)がかかっている。」
「グラス(氷)ならお皿の中のの方がいいわ。」とファヴォリットは言った。
 ブラシュヴェルは言い張った。
「ナイフを見たまえ。ボンバルダでは柄が銀だが、エドンでは骨だ。銀の方が骨よりも高いんだ。」
「そう、銀|髯《ひげ》の腮《えら》を持ってる人を除いてはね。」とトロミエスが言った。
 彼はその時、ボンバルダの窓から見える廃兵院の丸屋根を見ていた。
 それからちょっと言葉がと絶えた。
「おいトロミエス、」とファムイュは叫んだ、「先程、リストリエ
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