からまあ御覧なさいよ、何という所でしょう。寝台のある所で食事をしてるんじゃないの。ほんとに世の中が嫌《いや》になっちまうわ。」
七 トロミエスの知恵
さて、ある者は歌っており、ある者はやかましく饒舌《しゃべ》っていて、そして時々皆いっしょになって、ただもう非常な騒ぎであった。トロミエスは皆をさえぎった。
「そうやたらに饒舌ったり、あまり早口をきいたりするなよ。」と彼は叫んだ。「ほんとに楽しもうと思うなら少し考えなくちゃいけない。あまり即興なことばかりやってると、変に頭を空《から》にするものだ。流れるビールは泡《あわ》を立てない。諸君、急ぐなかれだ。御ちそうには荘重さを加えなければいけない。よく考えて食い、ゆるゆると味わおうじゃないか。あわてないがいい。春を見たまえ。春も急げば失敗する、すなわち凍る。あまり熱心なのは、桃や杏《あんず》を害する。あまり熱心なのは、りっぱな饗宴《きょうえん》の美と楽しみとを殺す。熱中したもうな、諸君。食通グリモー・ド・ラ・レーニエールもタレーランの意見に賛成しているではないか。」
反対のささやきが仲間のうちに聞こえた。
「トロミエス、われわ
前へ
次へ
全639ページ中293ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング