男は何であったろう。明らかに一人の貧しい人だったではないか。」
「まあ何をおっしゃいます!」とマグロアールは言った。「何も私や嬢様のためではございません。私どもにはどうだってかまいません。けれどそれは旦那様のためでございます。これから旦那《だんな》様は何で御食事をなさいます?」
司教は驚いたようなふうで彼女を見た。
「ああそんなことなら! 錫の器があるだろう。」
マグロアールは肩をそびやかした。
「錫はにおいがいたします。」
「では鉄の器は?」
マグロアールは意味深く顔をしかめた。
「鉄には妙な味がいたします。」
「それでは、」と司教は言った、「木の器がいい。」
数分後には、彼は前夜ジャン・ヴァルジャンがすわっていたその食卓で朝食をした。食事をしながらビヤンヴニュ閣下は、何にも言わない妹と、何かぶつぶつ不平を言ってるマグロアールとに、パンの切れを牛乳につけるためには、匙《さじ》も肉叉《フォーク》もいらなければまた木で作ったそんなものもいらないということを、快活に述べ立てた。
「まあ、何という考えだろう!」とマグロアールは行ったりきたりしながら独語した。「あんな男を家に入れるなん
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