彼はその燭台を右手に取って、そして息をころし足音をひそめながら、隣室の扉《とびら》の方へやって行った。それは既にわかっているとおり司教の室である。その扉の所へ行ってみると、彼はそれが少し開いていることを見い出した。司教はそれをしめておかなかったのである。
十一 彼の所業
ジャン・ヴァルジャンは耳を澄ました。何の音もしない。
彼は扉を押した。
彼はそれを指の先で軽くやったのである。はいってゆこうとする猫《ねこ》のようなひそやかなおずおずした穏かさで。
扉は押されたとおりにほとんど見えないくらい静かに動いて、前よりなお少し大きく開いた。
彼は一瞬間待った。それから再び、こんどは少しく大胆に扉を押した。
扉はやはり音もなく押されるまま動いた。そしてもう彼が通れるくらいにはじゅうぶん開いた。しかし扉《とびら》のそばに一つの小さなテーブルがあって、それが扉と具合悪い角度をなして入り口をふさいでいた。
ジャン・ヴァルジャンは困難を見て取った。どうあってももっと扉を大きく開かなければならなかった。
彼は心を決して、前よりもいっそう力を入れて三度扉を押した。ところがこんど
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