べてを、小さな子供に特有なまじめなまた時としてきつい眼眸《まなざし》で。それはわれわれ大人の頽廃《たいはい》しかけた徳義に対して子供の光り輝く清浄無垢が有する神秘である。あたかも彼らは自ら天使であることを感じ、われわれ大人が人間であることを知ってるかのようである。それからその女の子は笑い出した。そしていくら母親が引きとめても、走り出さんとする子供のおさえることのできない力で、地面にすべりおりてしまった。と突然、その子はぶらんこにのってる他の二人の子供を見て、急に立ち止まって、感じ入ったように口を開いて舌を出した。
テナルディエの上さんは二人の子を解き放し、ぶらんこからおろしてやり、そして言った。
「三人でお遊びよ。」
そのくらいの年ごろにはすぐになれ親しむものである。間もなくテナルディエの二人の子は新しくきた子供といっしょに地面に穴を掘って遊んだ。限りない楽しみのようだった。
新来の子供は非常に快活だった。母親の温良さはその児の快活さのうちにあらわれる。子供は木の一片を拾ってそれをシャベルにして、蠅《はえ》のはいるくらいの小さな穴を元気そうに掘った。墓掘りのするようなことも、子供がすればかわゆくなる。
二人の婦人は話し続けていた。
「あなたのお子さんの名は?」
「コゼットといいます。」
コゼットというもウューフラジーが本当である。女の児の名はウューフラジーだった。しかし母親はウューフラジーをコゼットにしてしまった。それはジョゼファをペピタにかえ、フランソアーズをシエットにかえる、母親や民衆の柔和な優しい本能からである。それは一種の転化語であって、実に語原学を乱し困らすところのものである。われわれはテオドールをグノンというのに首尾よく変えてしまった一人の祖母のあるのを知っている。
「お幾歳《いくつ》ですか。」
「じきに三つになります。」
「うちの上の子と同じですね。」
そのうちに三人の女の児はいっしょに集まって、ひどく気をひかれてうっとりしてるような様子だった。一事件が起こったのである。大きなみみずが一匹地の下から出てきたので、それに見とれてるのだった。
彼らの輝いた額は相接していた、あたかも一つの後光のうちにある三つの頭のようだった。
「子供はほんとにすぐに仲よくなるものですね。」とテナルディエの上《かみ》さんは叫んだ。「あんなにしているとまるで三人の姉妹《きょうだい》のようですね。」
その言葉は、おそらくも一人の母親が待ち受けていた火花であった。彼女はお上さんの手を執り、その顔をじっと見守って、そして言った。
「私の子供を預っていただけませんか。」
テナルディエの上さんは、承知とも不承知ともつかないびっくりした様子を示した。
コゼットの母親はつづけて言った。
「ねえ、私は娘を国へつれてゆくことができませんのです。そうしては仕事ができません。子供連れでは仕事の口が見つかりません。あちらの人はほんとに変なんです。私がお店の前を通りかかったのは神様のお引き合わせでございます。私はお子さんたちのあんなにかわゆくきれいで楽しそうなところを見まして、ほんとに心を取られてしまいました。ああいいお母さんだ、そうだ、三人で姉妹のように見えるだろう、と思いました。それに私はじきに帰って参ります。子供を預っていただけませんでしょうか。」
「考えてみましてから。」とテナルディエの上さんは言った。
「月に六フランずつ差し上げますから。」
その時店の奥から男の声が響いた。
「七フランより少なくてはいかん。そして六カ月分前払いでなければ。」
「六七、四十二。」とテナルディエの上さんは言った。
「それを差し上げますから。」と母親は言った。
「そのほか支度の金に十五フラン。」と男の声はつけ加えた。
「すっかりで五十七フラン。」とテナルディエの上さんは言った。そしてその数字とともに、彼女はまた何とはなしに歌い出した。
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余儀なし、と勇士は言いぬ。
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「差し上げますとも。」と母親は言った。「八十フラン持っていますから。それで国へ行けるだけは残ります。歩いてさえ行けば。あちらへ行ったらお金をもうけまして、少しでもできたら子供を連れにまた帰って参ります。」
男の声がまた響いた。
「その子は着物は持ってるね。」
「あれは私の亭主ですよ。」とテナルディエの上さんは言った。
「ええ着物はありますとも、――大事な子ですもの。私はあなたの御亭主だとわかっていました。――それも上等の着物なんです。ずいぶん贅沢なのです。皆ダースになっています。それからりっぱな奥様が着るような絹の長衣もあります。みんな私の手鞄の中にあります。」
「それを渡しておかなければいかんよ。」と男の声がした。
「ええ上げますとも!」と
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