カ月過ぎた今日では、彼女の髪は灰色になり、彼の髪はまっ白になっていた。
サンプリス修道女は彼とともにはいってきていなかった。彼は寝台のそばに立ちながら、あたかも室の中にだれかがいてそれに沈黙を命ずるかのように、指を口にあてていた。
ファンティーヌは目を開いた。彼女は彼を見た。そしてほほえみながら静かに言った。
「あの、コゼットは?」
二 楽しきファンティーヌ
ファンティーヌはびっくりした身振りも喜びの身振りもしなかった。彼女は喜びそのものであった。「あの、コゼットは?」というその簡単な問いは、深い信念と確信とをもって、不安も疑念もまったくなしに発せられたので、マドレーヌ氏はそれに答うべき言葉が見つからなかった。ファンティーヌは続けて言った。
「私はあなたがそこにいらっしゃるのを知っていました。私は眠っておりましたが、あなたを見ていました。もう長い間見ていました。夜通し私は目であなたの後《あと》をつけていました。あなたは栄光に包まれて、あなたのまわりにはあらゆる天の人たちがいました。」
彼は十字架像の方に目を上げた。
「ですが、」と彼女は言った、「どこにコゼットはいるのか教えて下さい。私が目をさます時のために、なぜ私の寝床の上に連れてきて下さらなかったのでしょう。」
彼は何か機械的に答えた。しかし何と答えたのか、自分でも後でどうしても思い出せなかった。ちょうど仕合わせにも、医者が知らせを受けてやってきた。彼はマドレーヌ氏を助けた。
「まあ静かになさい。」と医者は言った。「子供はあちらにきています。」
ファンティーヌの目は輝き渡り、顔一面に光を投げた。すべて祈願の含み得る最も激しいまた優しいものをこめた表情をして、彼女は両手を握り合わした。
「ああどうか、」と彼女は叫んだ、「私の所へ抱いてきて下さい。」
ああいかに人の心を動かす母の幻想であるかよ! コゼットは彼女にとっては常に、抱きかかえ得る小さな子供であった。
「まだいけません。」と医者は言った。「今すぐはいけません。まだあなたには熱があります。子供を見たら、興奮して身体にさわるでしょう。まずすっかりなおらなければいけません。」
彼女は苛《い》ら立ってその言葉をさえぎった。
「私はなおっていますわ! なおっていますっていうのに! この先生は何てわからずやでしょう。ああ、私は子供に会いたい
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