格もなく、また社会に対して意見を述べる資格もないでしょう。しかしながら、私がぬけ出そうと試みたあの汚辱ははなはだ人を害《そこな》うものです。徒刑場は囚人を作るものです。少しくこの点を考えていただきたい。徒刑場にはいる前、私は知力の乏しい一個のあわれな田舎者《いなかもの》でした、一種の白痴でした。しかるに徒刑場は私を一変さしてしまった。愚鈍であった私は、悪人となった。一個の木偶《でく》にすぎなかった私は、危険な人物となった。そして苛酷《かこく》が私を破滅さしたと同じく、その後寛容と親切とは私を救ってくれたのである。いやしかし、諸君は私がここに言うことをおわかりにならないでしょう。諸君は私の家の暖炉の灰の中に、七年前私がプティー・ジェルヴェーから盗んだ四十スー銀貨を見いだされるでしょう。私はもうこれ以上何も申すことはありません。私を捕縛していただきたい。ああ検事殿は頭を振っていられる。あなたはマドレーヌ氏は気が狂ったと言われるのですか。あなたは私の言うのを信じないのですか! それははなはだ困ることです。少なくともこの男を処刑せられないようにしていただきたい。なに、この人々は私を知らないというのか。ジャヴェルがここにいないのを私は残念に思う。彼ならば、必ず私を認めてくれるだろう。」
 それらの言葉が発せられた調子のうちに、親愛にして悲痛な憂鬱《ゆううつ》のこもっていた様は、到底これを伝えることはできない。
 彼は三人の囚徒の方へ向いた。
「おい、私の方ではお前たちを覚えている! ブルヴェー! お前は思い出さないのか?……」彼は言葉を切って、ちょっと躊躇《ちゅうちょ》した。それから言った。
「お前が徒刑場で使っていたあの弁慶縞《べんけいじま》の編みズボンつりを、お前は覚えていないか。」
 ブルヴェーは愕然《がくぜん》とした、そして恐る恐る彼を頭から足先まで見おろした。彼は続けて言った。「シュニルディユー、お前は自分でジュ・ニ・ディユーと呼んでいたが、お前には右の肩にひどい火傷《やけど》の跡がある。T・F・Pという三つの文字([#ここから割り注]訳者注 汝は人を恐れしむるならんという意を表わす入墨の文字[#ここで割り注終わり])を消すために、火のいっぱいはいった火鉢《ひばち》にある時その肩を押し当てたのだ。しかし文字はやはり残っている。どうだ、そのとおりだろう。」
「そのとお
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