ンティーヌにも同じく不思議な影響を与えた。彼女はその露《あら》わな腕を上げ、よろめく者のように暖炉の戸前につかまった。それでも彼女は自分のまわりを見回して、そして自分自身に言うかのように低い声で言い出した。
「放免! 免《ゆる》してやれ、六カ月牢に行かせるな! それを言ったのはだれだろう。いやだれが言えるものか。私の聞き違いかしら。市長の奴が言うはずはない。あなた、ジャヴェルの旦那、あなたですか、私を放免してやれとおっしゃったのは。おお聞いて下さい、申し上げたらきっと私を許して下さるでしょう。このひどい市長です、元はといえば皆この市長のおいぼれのお陰です。察して下さい、ジャヴェルの旦那、この人が私を追い払ったんです。工場でいろいろなことを言いふらす乞食婆どものためにです。あまり酷《ひど》いではありませんか、正直に仕事をしてるあわれな者を追い出すなんて! それからというもの、私は十分お金が取れなかったんです、そしてこんなに不仕合《ふしあわせ》になったんです。第一警察の方でも是非ともしていただきたい改良が一つありますわ。監獄の請負人が貧乏人たちを苦しめないように、してもらいたいことです。説明してあげてもよござんすわ。シャツを縫って十二スー取れていたのが、九スーになってしまったんです。それではもう暮らしてはいけません。だから何にでもならなければならなくなったんです。それに私には娘のコゼットがいます。いやな商売でもしなければならなかったんです。これでおわかりでしょう、あの市長のやつがみな不運の元なんです。それから私は、あの軍人の集まるカフェーの前であの男の帽子を踏みつけました。ですがあの人は、雪で私の着物をすっかり台なしにしてしまったんです。私どものような女は、晩に着る絹物はただ一枚きり持ちません。ねえジャヴェルの旦那、私は何もことさら悪いことをしたのではありませんわ、本当です。私よりもっと悪い女はどこにでもいます、そしてもっと楽をしています。ああジャヴェルの旦那、私を許してやれとおっしゃったのはあなたでしょう。よく調べてみて下さい。家主さんにもきいて下さい。今では家賃もちゃんと払っています。私が正直なことはだれにきいてもわかります。おや、ごめん下さい、知らずに暖炉の戸前にさわったのでけむり出して。」
 マドレーヌ氏は深い注意を払って彼女の言うのを聞いていた。彼女がしゃべっ
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