《たこ》を出かしてるイギリスの女中のように、すわり込んでぼんやりするために作られてはいない。そのためにではないんだ。愛情は愉快にさ迷う。楽しき愛情よ! 迷いは人間的であると人は言う。が僕は言いたい、迷いは恋愛的であると。婦人諸君、僕は諸君を皆崇拝する。おおゼフィーヌ、おおジョゼフィーヌ、愛嬌のある顔よ、歪《ゆが》んでさえいなければ素敵である。うっかり腰をかけられてつぶされたようなかわいい顔つきをしている。ファヴォリットに至っては、ニンフにしてミューズの神だ。ある日ブラシュヴェルがゲラン・ボアソー街の溝《どぶ》の所を通っていると、白い靴足袋《くつたび》を引き上げ脛《はぎ》を露《あら》わにした美しい娘を見た。その初会が彼の気に入って、そして彼は恋するに至った。その彼の恋人がファヴォリットなのだ、おおファヴォリットよ! 汝の脣《くちびる》はイオニア式だ。エウフォリオンというギリシャの画家が居たが、脣の画家と綽名《あだな》されていた。そのギリシャ人一人のみが汝の脣を画くに足る。聞きたまえ、汝以前にはかつてその名に値する人間はいなかったのだ。汝はヴィーナスのように林檎《りんご》をもらい、イヴのように林檎を食うために作られている。美は汝より始まる。僕は今イヴのことを言ったが、イヴを作ったのはそれは汝だ。汝は美人発明の特許権を得てもいいのだ。おおファヴォリット、こんどは汝と呼ぶことをやめよう、詩から散文の方へ移るのだ。君は先刻僕の名のことを言ったね。それは僕の心を動かした。しかしわれわれが何であろうとも、われわれは名前に疑問をいだこうではないか。名前も誤ることがある。僕はフェリックス([#ここから割り注]訳者注 繁昌幸福の意[#ここで割り注終わり])という名だ、そして少しも幸福ではない。言葉は嘘《うそ》つきである。言葉がわれわれにさし示すことをむやみに受け入れてはならない。栓《せん》を買わんためにリエージュ([#ここから割り注]訳者注 キルク栓の意[#ここで割り注終わり])の町に手紙を書き、手袋を得んためにポー([#ここから割り注]訳者注 革の意[#ここで割り注終わり])の町に手紙を出すは誤りである([#ここから割り注]訳者注 ファヴォリットの名は寵愛の意を有することを記憶せられたい[#ここで割り注終わり])。ダーリア嬢よ、僕がもし君であったら、ローザと自分を称したい。花にはいい
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