書かれた筈である――その破綻した場面で、右のことが云われたこと、久内の口をかりて作者自身の批判として云われたこと、そのことに意味がある。作者は明かに雁金に心惹かれた。こうなると、実際問題として、久内の方が負けである。これは単に、実行に対するノスタルジーでは済まされまい。
 久内の敗亡を、作者は是認するや否や。もし是認するとしたら、今後の作に於て或は「紋章」の美はなくなるかも知れない。然しそれにしても、作者の「鷲」はまたどこかで美しく肥え太ることを妨げないだろう。



底本:「豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)」未来社
   1967(昭和42)年11月10日第1刷発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2006年4月25日作成
青空文庫作成ファイル:
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