な》くなってしまうように思うことがあります。ここにはたくさんの花があって、あまりにけばけばしいので、それを見るとわたくしはなんだか忌《いま》いましくなって来ます。しかしあなた、こうした学術に関するわたくしの話は、どうぞ信用して下さらないように……。あなたのご自分の眼でご覧になることのほかは、わたくしの言うことなどはなんにもご信用なさらないで下さい」
「わたしは自分の眼で見たものをすべて信じなければならないのですか」と、ジョヴァンニは以前の光景を思い出して逡巡《しりごみ》しながら、声をとがらして訊いた。「いいえ、あなたはわたくしに求めなさ過ぎます。どうぞ、あなたの口唇《くちびる》からもれること以外は信じるなと言って下さい」
ベアトリーチェは彼の言うことを理解したように見えた。彼女の頬は真紅《まっか》になった。しかも彼女はジョヴァンニの顔をじっと眺めて、彼が不安らしい疑惑の眼をもって見ているのに対して、さながら女王のような傲慢《ごうまん》をもって見返した。
「では、そう申しましょう。あなたがわたくしのことをどうお考えになっていたとしても、それは忘れて下さい。たとい外部の感覚は本当であって
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