た。そして、こんな目まいがしそうな山の頂上に立って、力一杯に大空をさし上げたりしているよりも、山のふもとで羊飼でもしている方が、ずっと仕合せだということを思い知りました。というのは、勿論、君達にもすぐ分る通り、ハーキュリーズは彼の頭と肩との上に重みを背負っているばかりではなく、心に大変な責任を感じていたからです。だって、もしも彼がじっと立って、空を動かないようにしていないと、おそらくお日様がぐらつき出すでしょう! 或は又、夜になって、沢山のお星様がその座からずり出して、人々の頭の上へ、火の雨のように降って来るでしょう! そして、もしも、彼がその重みでよろめいたがために、空が裂けて、大きな割目《われめ》が端から端まで出来たりしたら、その勇士はどんなに面目ない気がするでしょう!
 それから、遠く海の向うの端に、巨人の大きな姿が、雲のように見えて来て、彼が何ともいえないほど嬉しく思うまでに、どれ位の時間がたったか、僕は知りません。とにかく、アトラスはもっと近づいてから、手を上げましたが、ハーキュリーズはその手に、一本の枝に垂れた、南瓜《かぼちゃ》ほどもある、三つの大きな金の林檎を見ました。

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