しかし、小さい時から、毒蛇や竜を相手にすることは、僕の仕事みたいな、いや、ほとんど楽しみみたいなものでした。』
 若い女達は彼の大きな棍棒と、彼の着ているもじゃもじゃの獅子の皮と、それからいかにも勇士らしい彼の手足や身体《からだ》つきを見ました。そして彼等は、この人なら、いかにもほかの男達の力にはとても及ばないようなことでもやってのけようというのも尤もだと、お互にささやき合いました。しかし、それにしても、百の頭を有《も》ったあの竜がいては! たとえ百の命があったとて、そんな怪物の毒牙をのがれる見込みのある人間なんているでしょうか? その娘たちは大変やさしい心をしていたので、彼等はこの勇敢な、立派な旅人がそんなあぶないことを企てて、九分九厘、あの竜の百もある口に食われて、命を捨てるのを見るにしのびない気がしました。
『お帰りなさい、』彼等はみんなで叫びました。『御自分のおうちへお帰りなさい! あなたのお母さまは、あなたの無事息災な姿を見て、うれし涙にくれるでしょう。たとえあなたが竜に勝って帰ったところで、お母さまがそれ以上お喜びになれるわけはないでしょう。金の林檎なんか、どうだっていいじ
前へ 次へ
全307ページ中168ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ホーソーン ナサニエル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング