れて来ると、蝙蝠のような翼をして、とても意地が悪そうで、お尻におそろしく長い螫《はり》を持った、いやな小さなものが一杯いることが分りました。エピミーシウスを刺したのは、そのうちの一匹なのでした。まもなくパンドーラもまた、エピミーシウスに負けないくらい痛がったり、こわがったりして、悲鳴をあげ始めましたが、その騒ぎ方はずっとひどいものでした。一匹の小さな怪物が彼女の額《ひたい》にとまっていましたが、もしもエピミーシウスが飛んで行って、それを払いのけなかったら、彼女はどんなに深く刺されていたか知れません。
 さて、その箱から逃げ出したこれらのいやなものは一体何かということを君達が聞きたがるなら、それはこの世の「わざわい」の全一族だったと、僕は答えなければなりません。その中には、悪い「情欲の虫」もいました、とてもいろんな種類の「心配の虫」もいました、百五十以上の「悲しみの虫」もいました、みじめな、いたましい恰好をした、とても沢山の「病気の虫」もいました、それから、「いたずらの虫」の類に至っては、お話にもなんにもならないほどいました。つまり、その時から今日まで、人間の心やからだを苦しめて来たもの
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