いてしまいました。というのは、スケヤクロウが差出していると、その眼はお星様のように光り輝いているのですが、それでも白髪婆さん達にはその光がちらりとも見えず、それを見たいとあせれば、よけいに三人とも真暗闇になるのでしたから。
 クイックシルヴァは、シェイクヂョイントとナイトメヤが二人とも、眼をさぐり廻って、それぞれスケヤクロウを怒って見たり、お互に悪口を言ったりしているのを見ていると、あまりおかしくて、声を立てて笑うまいとするのに骨が折れました。
『さあ今が君の出時《でどき》だ!』と彼はパーシウスに耳打しました。『早く、早く! 誰かが額にあの眼をはめ込まないうちに。おばあさん達にむかって飛びかかって行って、スケヤクロウの手から眼をもぎ取るんだ!』
 パーシウスは時を移さず、三人の白髪婆さん達がまだお互に小言《こごと》を言い合っている暇に、藪の蔭から飛び出して行って、獲物をせしめてしまいました。その不可思議な眼は、彼の手の中でとてもぎらぎらと光って、賢《さか》しげに彼の顔を見上げて、上下《うえした》の瞼《まぶた》さえあれば、ぱちくりとでもやりそうな様子に見えました。しかし白髪婆さん達はそんなことになっていようとは露《つゆ》知らず、お互に姉妹達のうちの誰かが眼を取ったものと思い込んで、また新しく喧嘩を始めました。パーシウスは年取ったおばあさん達を、何もこれ以上無闇に困らせる気はなかったので、とうとう、わけを話してやった方がいいと考えました。
『おばあさん方《がた》、』と彼は言いました、『どうぞあなた方同志を怒らないで下さい。もし誰かが悪いとすれば、それは僕なんです。というのは、僕があなた方の輝かしい、立派な眼を持たせてもらっているのですから!』
『お前さんが! お前さんがあたし達の眼を持っているんだって! そしてお前さんは誰だい?』と、三人の白髪婆さんは、みんな一度に言いました。というのは、彼等はいう迄もなく、聞きなれない声を聞き、彼等の眼が何処の何者とも知れない人の手に渡ったことを知って、ひどくびっくりしたからでした。『おう! あたし達どうしましょう、姉妹達? あたし達どうしましょう? あたし達はみんな真暗《まっくら》だ! あたし達の眼を返して下さい! あたし達のたった一つの、大切な、掛替《かけがえ》のない眼を返して下さい! お前さんは自分の眼が二つもあるじゃないか! 
前へ 次へ
全154ページ中21ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ホーソーン ナサニエル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング