言《ひとこと》も口をきかないで、実に無邪気な本気さで、泉の中を見下したり空を見上げたりしているので、ビレラフォンも元気が出て来るのを感じないわけに行きませんでした。
 さて君達は、どうしてビレラフォンが翼のある馬をつかまえようとしたか、そのわけが聞きたいというでしょう。そして、そのことについて話をするのに、彼がペガッサスの現れるのを待っている間ほど、いい機会はありますまい。
 もしも僕がビレラフォンの今までの冒険をすっかりお話ししていたら、それだけで結構長い長い話になってしまうでしょう。だから、ただ、アジアの或る国に、カイミアラというおそろしい怪物が現れて、今から日が暮れるまでの間にはとても話し切れないほどの害をしていたというだけで沢山でしょう。僕が読んだうちでも一番いい本によると、このカイミアラというのは、今までに土からうまれた生き物の中でも、断然とまでは行かなくとも、おおよそ一番みにくい、有毒な動物で、また最も奇妙不可思議で、相手に廻してこれほど厄介なものはなく、逃げようにもなかなか逃げられない代物《しろもの》でした。それは尻尾がうわばみみたいで、胴体は何に似ているといっていいか分らないような恰好で、頭は三つになっていて、その一つは獅子、二番目は山羊、三番目はおそろしく大きな蛇になっていました。そして、熱い火の息が、それぞれ三つの口から燃え出していました! 地上の怪物ですから、翼があったかどうかは知りません。しかし、翼があったにせよ、なかったにせよ、それは山羊や獅子のように走り、蛇のようにのたくるという風にして、それら三つのものを全部うまく一しょにしたくらい速く動きまわりました。
 おう、この兇悪な動物は、実に限りない害をしました! その燃える息吹《いぶき》で以て、それは森林を火の海と化し、穀物畑を焼き尽し、あまつさえ、村をも、垣根や家もろともに焼き払いました。そしてあたり一帯を焼野原としてしまって、その上、人間や動物を丸呑みにしておいて、それから腹の中の竈《かまど》で料理をするのでした。おそろしいではありませんか、君達! 僕達はお互に、カイミアラのようなものに出あいたくないものですね。
 この憎むべきけもの(無理にもそれをけものと云えるとすれば)が、いろいろこうした恐ろしいことをやっている最中に、ちょうどビレラフォンが、その国の王様を訪ねてやって来ました。その
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