て、足にみずかきがついていて、頤に一束の海藻みたいなものが生えた人間の姿に返りました。
『一体、あなたはわたしにどんな御用があるんです?』「老人《オウルド・ワン》」は息がつけるようになるとすぐ、そう叫びました。というのは、そんなにいろいろほかのものに、次から次へと化けることは、まったく骨の折れる仕事でしたから。『どうしてわたしをそんなにきつく締めつけるんです? すぐ放して下さい、でないと、あなたを非常に失礼な人だと思いますよ!』
『僕の名はハーキュリーズというのだ!』と、力持の見知らぬ人は割れるような声で言いました。『君がヘスペリディーズの庭への一番の近道を教えてくれるまでは、決して手を放してやらないぞ!』
老人は彼を押《おさ》えている人の名を聞いた時、これはもう彼の知りたがっていることは何でも教えないといけないということを、すぐにさとりました。前にも言ったように、「老人《オウルド・ワン》」は海に棲んでいて、ほかの、海で暮らす人達と同じように、どこでも歩き廻っていました。勿論、彼はハーキュリーズの評判は度々聞いていて、彼が世界の至る処で常にすばらしい事をやっていることや、彼が一旦やろうと思った事は必ず思切ってやるということを知っていました。だから彼はもう逃げようなどとはしないで、その勇士に、ヘスペリディーズの庭への道を教えた上に、彼がそこへ行きつくまでに切り抜けなくてはならない、いろんな困難についての注意までもしてやりました。
『あなたは、こう行って、こう行かなくてはなりません、』と、「海の老人」は方角をしらべてから言いました、『するとおしまいに、大空を肩にしょって立っている大変背の高い巨人が見えてくるでしょう。そして、その巨人は、もしも、上機嫌だったら、ヘスペリディーズの庭がちょうどどの辺にあるか、あなたに教えてくれるでしょう。』
『そして、もしもその巨人が機嫌の悪い時にぶっつかっても、』と、ハーキュリーズは彼の棍棒を、指の先に、天秤みたいに平均をとって乗せながら言いました、『多分僕は、何とかして彼に言わせるよ!』
「海の老人」にお礼を言い、又彼をあんなに乱暴に締めつけたことを詫びて、その勇士はまた、旅をつづけました。彼は実に沢山の変った冒険に出遇いました。それは詳しく話す値打があるもので、もしもそうしている時間さえあれば、君達にも十分聞きごたえがあると思うので
前へ
次へ
全154ページ中92ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ホーソーン ナサニエル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング