は、すっかりその秘密の箱の中に閉じ込められていたもので、大切に取っておくようにといって、エピミーシウスとパンドーラとに渡されたのも、世の中の子供達がそんなものに苦しめられることのないようにしたかったからでした。もしも彼等が頼まれた通りにしていたならば、万事都合よく行ったことでしょう。その時から今に至るまで、悲しい思いをする大人もなかったでしょうし、子供達にしたって、涙一滴こぼすわけもなかった筈なんです。
 しかし――これで見ても、誰か一人でも間違ったことをすると、世間全体が迷惑するというわけが君達にも分るでしょうが――パンドーラがそのとんでもない箱の蓋をあけたことと、それからまた、エピミーシウスがそれをとめなかったというおちど[#「おちど」に傍点]とによって、これらの「わざわい」がわれわれの間に足がかりを得て、急には追っぱらえそうにもなくなったのです。というのは、君達にもたやすく分る通り、この二人の子供は、そのいやなものの群を、彼等の小さな家から出さないでおくというわけには行かなかったからです。それどころか、彼等はそんなものは早く出て行ってほしかったので、何よりも先に、戸口と窓とをあけ放しました。すると、果して、その翼の生えた「わざわい」達はみんな外へ飛び出して行って、そこいら中の子供達をひどく苦しめ悩ましたので、その後幾日もの間、彼等の誰もが、にこりともしなかったほどでした。それから、大変不思議なことには、これまでどれ一つ凋《しぼ》んだことのなかった草花や露を帯びた花までが、今度は一日二日たつと、だらりとなって、花びらが散りはじめました。その上、今までは、いつまでも小さいままでいそうに思われた子供達が、今度は一日々々と年を取って、まもなく青年や年頃の娘になり、やがては大人になり、そんなことは夢にも思わないうちに、じいさん、ばあさんになってしまいました。
 さて、仕方のないパンドーラと、それに負けないくらいのエピミーシウスとは、家の中にじっとしていました。彼等は二人ともひどく刺されて、大変痛かったのですが、それが世界始まって以来感じられた最初の痛さであっただけに、彼等には一層|耐《た》え難く思われました。いうまでもなく、彼等は苦痛にはまるで慣《な》れていなかったので、それが何のことやら、わけが分りませんでした。そこへもって来て、彼等は二人とも、自分自身に対して、それ
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