の耳が鳴ってるのでしょうか? 或はまた、彼女の心臓の打つ音でしょうか? パンドーラは本当に何か聞えたのかどうか、自分でもはっきりときめてしまうことが出来ませんでした。しかし、いずれにしても、彼女の好奇心は、いよいよ強くなって来ました。
 彼女が頭をもとへ戻した時、彼女の目は、金の紐の結び目にとまりました。
『これを結んだ人は、大変器用な人にちがいないわ、』とパンドーラは一人で言いました。『それでもあたし、それをほどけそうな気がするわ。あたし、せめて、その紐の両はしくらいは見つけなくちゃ。』
 そこで彼女はその金の結び目を指につまんで、出来るだけはっきりと、その込み入ったところを調べて見ました。殆どそんなつもりもなく、また何をしようとしているかもはっきりとわきまえないで、彼女はやがて一生けんめいに、それをほどきにかかっていました。そのうちに、明るい日の光が、あけ放した窓から射《さ》し込んで来ました。また、遠くで遊んでいる子供達の楽しそうな声も、それと一しょに、聞えて来ました。そして多分その中にはエピミーシウスの声もまじっていたのでしょう。パンドーラは手を休めて、それに聞き入りました。なんといういいお天気でしょう! もしも彼女が、そんな面倒くさい結び目なんぞうっちゃっておいて、その箱のことなんかもう考えないことにして、彼女の小さな遊び友達のところへ飛んで行って、仲間になって面白く遊んでいたら、その方が利口じゃなかったでしょうか?
 しかし、その間もずうっと、彼女の指は半分無意識に、しきりとその結び目をいじっていました。そしてふと、この不思議な箱の蓋についた、花の冠をかぶった顔が目についた時、彼女はそれがずるそうに、彼女にむかって歯をむき出して笑っているのを見たような気がしました。
『あの顔はいじわるそうだこと、』と彼女は思いました。『もしかあたしが悪いことをしてるから笑ってるんじゃないかしら! あたしほんとにもう、逃げ出したくなっちゃった!』
 しかしちょうどその時、ほんのちょっとしたはずみで、彼女はその結び目をひねるようにしましたが、それが思いもかけぬ結果になりました。金の紐は、まるで魔法をかけたように、ひとりでほどけてしまって、箱は締物《しめもの》なしになってしまいました。
『こんな変なことって知らないわ!』パンドーラは言いました。『エピミーシウスは何というでしょう
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