と見ると、醜いように見えたのでしょうか。
顔のうちで一番美しいのは、蓋のまん中に、高浮彫《たかうきぼり》という彫り方で出来ている顔でした。蓋の板は、磨きをかけて、黒っぽい、なめらかな、ゆたかな美しさを出し、そのまん中に、額《ひたい》に花の冠を巻いたその顔があるだけで、ほかに細工はしてありませんでした。パンドーラはこの顔を幾度も幾度も眺めて、その口もとは、生きた口と同じように、笑おうと思えば笑えもし、真面目な顔つきになろうと思えば、またそうもなれそうな気がしました。実際、その顔つき全体が、大変いきいきとした、そしてどちらかといえば、いたずららしい表情をしていて、それがきっとその木彫《きぼり》の唇から、言葉になって飛び出して来そうに思われるくらいでした。
もしもその口が物を言ったとしたら、大抵、次のようなことででもあったでしょう。
『こわがるんじゃないよ、パンドーラ! この箱をあけたって何事があるものかね? あの可哀そうな、馬鹿正直のエピミーシウスのことなんか気にすることはないよ! お前さんはあの子より賢いし、十倍も勇気がおありだ。この箱をあけなさい、そして、何か大変きれいなものがありはしないか、見てごらん!』
僕はも少しで言うのを忘れてしまうところだったが、その箱は締《し》めてありました。錠前とか、何かほかのそういったようなものでなしに、金の紐を大変込み入った結《むす》び方にして留めてあったのです。この結び目には、終りもなければ、始めもないように見えました。大変むずかしくひねくり廻して、とても沢山の出入りがあって、それがどんな手先の器用な人でも、ほどけるならほどいて見よと、憎らしくも威張っているように思えるのですが、こんな結び目もないものでした。しかし、それをほどくのが大変むずかしそうなので、よけいにパンドーラはその結び目をしらべて、それがどんな風に出来ているか、ちょっと見たくなって来ました。彼女はもう、二三度はその箱の上にかがんで、その結び目を親指と人差指との間につまんで見たことはありましたが、それをいよいよほどいて見ようとまではしなかったのでした。
『あたし本当に、それがどんな風に出来ているか、分って来た気がするわ、』と彼女は一人で言いました。『いや、あたしはそれをほどいてから、また結び直すことさえ出来そうだわ。ほんとに、それ位なことをしたって、何でもありは
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