んと浴びて、うつらうつら眠っているように見えた。そして遥か彼方には、明るい家々が深緑《ふかみどり》の山肌を、その頂から麓《ふもと》のあたりまで、はだれ[#「はだれ」に傍点]雪のように、斑《まだら》に点綴《てんてい》しているのが望まれた。
 海岸通りにたち並んでいる家では、その柵のところに鉄の格子戸がひろい散歩路のほうに開くように付けてある。その路のはしには、もう静かな波がうち寄せて来て、ざ、ざあッとそれを洗っていた。――うらうらと晴れ亙《わた》った、暖かい日だった。冬とは思われない陽ざしの降り濺《そそ》ぐ、なまあたたかい小春日和である。輪を囘して遊んでいる子供を連れたり、男と何やら語らいながら、足どりもゆるやかに散歩路の砂のうえを歩いてゆく女の姿が、そこにもここにも見えた。
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 この散歩路のほうに向って入口のついた、小粋な構えの小さな家が一軒あったが、折しもその家から若い女がひとり出て来た。ちょっと立ちどまって散歩をしている人たちを眺めていたが、やがて微かな笑みを洩すと、いかにも大儀そ
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