いからと、固く誓って下さるのでございました。その後は私は、ウードレーをもう見ませんの。
そしてホームズ先生、これからがいよいよ、私が今夜伺った、特別の事情のお話になるのでございますが、まず私は毎土曜日の午前に、十二時二十二分の列車に乗るために、ファーナムの停車場まで、自転車に乗ってゆくことを御承知おき下さいまし。そのチルタアーングランジからの道は、それはそれは寂しいのでございますよ。殊にあの一方は、チャーリントンの荒地で、その一方はチャーリントンの廃院を包む森の間の、一|哩《まいる》ばかりの間と云うものは、とても寂しいのでございますの。あんな寂しいところは全く、どこにもないと云ってもいいほどだと思いますわ。あのクロックスベリーの丘の、広い道に来るまでは、荷馬車一台、百姓一人に逢うことさえも稀なのでございます。それがちょうど二週間前でございますが、私がちょうどそこを通っている時に、ふと肩越しに後を振り返ってみましたら、やはり自転車に乗った一人の男が、私の後方二百|碼《ヤード》くらいのところをついて来るのに目が止まりました。その男は中年の、身体の小さな、黒い髭の者のようでございましたが、
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