の女はもう僕の妻なのだ!」
「いやこの女の方は、君の寡婦だよ」
ピストルは鳴った。ウードレーの胴衣《ちょっき》の前からは、血が迸り出た。彼は悲鳴を上げながら、腕をもがいてのたうちまわったが、遂に仰向けに倒れて、その兇悪な真赤な顔は、急に気味悪い斑のある蒼白に変ってしまった。その年取った男はと見れば、まだ法衣を羽織っていたが、私がまだかつて耳にしたことなどはないような、呪詛の言葉を放ちながら、ピストルを取り出して向けようとした。しかしこれはまだピストルを取り上げる前に、ホームズの武器に狙われてしまった。
「これでいいだろう、――」
私の友人は冷やかに云った。
「ピストルを棄てろ!」
「ワトソン君、拾ってくれたまえ! そしてそれを頭につきつけて! いや有難う。君、カラザース君、そのピストルをこっちにくれたまえ。もう乱暴者は無いだろう。さあ、こっちに渡して、――」
「しかし、あなたはどなたですか?」
「僕はシャーロック・ホームズです」
「ああ、そうでございましたか!」
「いずれ私のことは知っているでしょう。警官が来るまで、私はその代理をつとめる。ああ君が来ていたのか!」
彼は馬丁が芝生
前へ
次へ
全51ページ中38ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドイル アーサー・コナン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング