闖入して来ないように、――なお更に、自分が書きつけている人々の名前や、貨幣などについて、五月蝿《うるさ》い追求を避けるためであったと思う。以て如件《くだんのごとし》なんだが、さてこれで級第かね?」
「ふむ、なるほど、そう云われれば、ずいぶんよく筋道が立っているね」
「まあこうしたことは、審理によって、いよいよ確証され、あるいは覆されよう。まあとにかくかくして、モラン大佐はもう、吾々の煩累となることはなくなったし、あのフォン・ヘルダー[#「ヘルダー」は底本では「ヘルダン」]の有名な空気銃は、警視庁の陳列館の、珍品として並べられよう。そしてこのシャーロック・ホームズ先生はまた、ロンドンの複雑した生活の齎《もたら》す幾多の興味ある問題の検討に、思うままに生涯を捧げることが出来ることになったと云うわけだ」



底本:「世界探偵小説全集 第四卷 シヤーロツク・ホームズの歸還」平凡社
   1929(昭和4)年10月5日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
その際、以下の置き換えをおこないました。
「貴方・貴女→あなた
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