らいたいんです」
と、彼は云いました。
「ポケットの中へ、私は手紙を持って来てますから、それを私の兄弟の所へ持って行って下さい。コーポレーション街一二六番地ですから、分かります。そこに会社の仮事務所があるんです。――もちろん、あなたとのお約束は彼が確実に取きめてくれるでしょうが、しかし私たちの間にはちゃんと話がしてあるんですから……」
「本当に、私は、あなたにどう云ってお礼を申上げたらいいか分かりません。ピナーさん」
私は申しました。
「そんなお礼なんかなさることはありませんよ。君。あなたはただあなたが当然受くべきものを受けたにすぎないんですもの。――だが、ちょっとしといていただかなければならない、――単なる形式なんですが、――つまらないことが一つ二つあるんです。そこへ紙を一枚お出しになって下さいませんか。そしてすみませんが、「最低俸給五百|磅《ポンド》にて、フランス中部鉄器株式会社営業支配人として働くことに同意致し候」と、お書きになって下さい」
私は彼の云う通りにしました。そして彼はその紙をポケットの中へしまい込みました。
「それからもう一つ精《くわ》しくおききしたいのは、あな
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