はフランスの町や村に百三十四の支店と、その他に、ブラッセルに一つとサン・レモに一つ支店を持っています」
 この話は私を呼吸《いき》づまらせるほど驚かせました。
「私はそんな会社の話はききませんよ」
 私は申しました。
「そりア、話をきこうわけはありません。それは非常に秘密にされたんです。なぜなら資本家がみんな匿名だったからですが、しかし公にしたほうがいいんです。――私の兄弟のハリー・ピナーは発企人《ほっきにん》なんですが、選挙の結果、専務取締として評議員に加わっています。彼は私がこちらへやって来ることを知ってたものですから、私に申しました。不遇な才能ある人間を抜擢して来てくれとね。――元気のいい前途有望な若い人をね。――あなたのことはパーカーが話してくれたんです。そして今夜こちらへつれて来てくれた人です。私たちは初任給として、あなたに五百|磅《ポンド》さし上げることが出来るにすぎませんが――」
「五百|磅《ポンド》、一年に!」
 と私は叫びました。
「それは最初だけの話です。しかしあなたの周旋でされた取引に対してはすべて、一パーセントの過勤割戻しをとることが出来るんです。そして正直の所
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