風に私の噂をしていようとは夢にも思っていませんでした。
「あなたは大変記憶がおよろしいんですって?」
と彼が云いました。
「少しばかり」
と、私は慎み深く答えました。
「職にお離れになってた間も、株のことに関心をお持ちでしたか?」
彼はききました。
「ええ、毎朝、株式取引の高低表は見ております」
「そうだ、それが本当の適不適を示してくれる」
と、彼は叫びました。
「これが一番いい方法だ。――あなたを試験するようなことをしても気にしないで、私にやらせて下さい、ね。――アイルシャイアーの株はどのくらいですか?」
「百五|磅《ポンド》から百五|磅《ポンド》四分ノ一まで」
「では、ニュウジーランド国庫公債は?」
「百四|磅《ポンド》」
「ブリティッシ・ブローラン・ヒルは?」
「七|磅《ポンド》から七|磅《ポンド》六まで」
「素適だ!」
と、彼は両手を振り上げて叫びました。
「私がきいたのと、すっかりみんな合ってる。ねえ、ねえ、あなた。――あなたはモーソンの店の事務員になるなんて勿体なさすぎますよ」
この叫びはむしろ私を驚かしたんです。あなたもそうお思いになるでしょう。
「いや、どう
前へ
次へ
全43ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドイル アーサー・コナン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング