間ばかり経った。そしてグラント・マンローは沈黙を破った。その彼が返事をした瞬間は、私が考え起すことのすきな時である。――彼はその可愛《かあい》い子供を抱き上げると、接吻《せっぷん》した。そしてそれから、静かに子供を抱いたまま、他《た》の片方の手を彼の妻のほうにさし出しながら、戸口のほうへ向き返った。
「私たちは、うちへいってもっともっと気持ちよく話し合おう」
と彼は云った。
「私はあまりいい人間じゃなかった、ねえエフィ。けれど私は、お前が信じていてくれたよりは、もう少しいい人間だと思っているよ………」
ホームズと私とは彼等について、例の細い路《みち》を下《くだ》っていった。私の友達はそこまで来ると、私の袖を引っぱった。そして
「ねえ君、もう僕たちはノーブリーにいるよりもロンドンに帰ったほうがよさそうだね」
と云った。
こうしてその日は、夜更けて、蝋燭を灯しながら寝台に行くまで、ホームズはもう再びものを云わなかった。
「ワトソン君」
と、彼は寝室にいってからこう云った。
「これからもし私が、余り自分の力に頼りすぎていると、君が気づいた時は、そしてまた、事件を余り考えないで扱おう
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