して、もう一つの計画を立てた。そこで彼女は例の肖像画、――それは確かに彼女が自分で描かせてもらったものなんだが――それを持ち出していった。するとこの間に、女中が追いかけて来て、彼女の夫が帰って来たことを知らせた。で彼女は、突嗟《とっさ》に、その女中の話をきいて、これは夫がいきなりこの離れ家にやって来るに相違ないと想像し、いそいでその中の人間を裏口から出して、たぶんそのすぐそばに生えている樅の林の中に這入らせちまったんだ。――こう云うわけで、あの男が這入っていった時には、家の中は空っぽだったのさ。けれど、もしきょうの夕方、あの男がもう一度様子を見にいって、やっぱりまだ空家のままだったら、お目にかかるよ。――君はどう思うね」
「僕もそう思うよ」
「とにかく、事件の真相はこうらしいね。しかしもし何か新事実が発見されて、それが僕たちの予想外のことだったとしても、まだもう一度考え直してみる時間は充分あるからね。――現在としては、ノーブリーへいったあの男から電報の知らせが来るまでは、何もすることはないわけさ」
しかし私たちは長く待つ必要はなかった。その電報は、私達がちょうどお茶を飲み終った所へと
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