かわかるでしょう。――さあ、ついて来て下さい。私達はじきに、総てのことを解決してやるんだ」
私達は入口に近寄って行った。と、その時不意に、一人の女がうちの中から現らわれて、ランプの黄金色《こがねいろ》の光を背にして立った。その女の顔は暗くて見えなかったけれど、何か哀願するらしく、両手でおがんでいるのが分かった。
「どうか、お願いですから止めて下さい。ジャック」
と、彼女は叫んだ。
「あなたがきょうの夕方ここへいらっしゃることを、私ちゃんと知っていたの。――ね、ようく考えてちょうだい。もう一度私の云うことを信じて、あとで悲しまなければならないような原因を作らないでちょうだい」
「俺はお前を信じすぎていた、エフィ」
彼は厳然として叫んだ。
「あっちへ行ってくれ! 君にかまっちゃあいられないんだ。私達はこの事件を一思いに解決してしまうのだ」
彼は彼女を片方におしやった。そして私達はすぐ彼につづいた。彼が扉《ドア》をひきあけると中年の婦人が、彼の前に飛び出して来て、通り道をふさごうとした。しかし彼は彼女を後《うしろ》へおしやった。そしてたちまち私達は二階に、かけ上《あが》った。グラント・マンローは、二階の、灯りのついた部屋にとび込んで行った。私達もそれに従った。
それは気持ちよさそうに飾られた部屋で、テーブルの上に二本、暖炉棚の上に二本、ローソクが灯されていた。隅の方に、小さな娘らしく見える女が、机に寄りかかって坐っていた。彼女は私達が入って行った刹那顔を向うにむけてしまった。けれども私達は、彼女が赤い着物を着て長い白い手袋をはめている事がわかった。がやがて、彼女が私達の方を振り向いた時、私は驚きと恐れのさけび声をあげた。彼女が私達の方に振り向けたその顔は、何とも云えない、死人そっくりの色であった。そしてその顔には、表情と言うものは全くなかった。――しかしほどなく、謎はとかれた。ホームズは笑いながら、その子供の耳の後《うしろ》に、彼の手をやって、その顔から面をはぎ取った。すると石炭のように真黒《まっくろ》い顔をした、小さな黒ン[#「黒ン」に傍点]坊の女の顔が現われた。それは、私達の驚いた顔を見て、面白そうに白い歯を光らせていた。私はその女の愉快そうなのに、つられて笑ってしまった。けれども、グラント・マンローは彼の手で咽喉《のど》をつかんだままじっと見つめて立ってい
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