[#ここから3字下げ]
.M. ERE. .ESL. NE.
[#ここで字下げ終わり]
そこで、この中で最初の文字はAに相違ない、と云うことを推定した。と云うのは、この短い文章の中で、三度も出ているから、このよく出て来る文字はAに相違ないと考えた。これは大変有益な発見であった。そこで、第二の場所は、Hであろうと想定してみた。そうしてまたあてはめてみると、
[#ここから3字下げ]
AM HERE A. ESLANE.
[#ここで字下げ終わり]
となり、また、名前の解りきった空所を満たしてみると、
[#ここから3字下げ]
AM HERE A. E SLANEY.
[#ここで字下げ終わり]
私はもうかなりの文字を得たので、今度は相当の自信を持って、第二の文章に進むことが出来ることとなった。それをやってみると今度はこんなものになった。
[#ここから3字下げ]
A. ELRI. ES.
[#ここで字下げ終わり]
さてこうなると、私は、Tと、Gを空所に入れると、やっと意味をなして来ることに気がついた――そしてこれはこの筆者のいる家か、旅館の名であろうと推定したわけだ」
検察官マーティンと私は、この我々の面前の難事業を、快刀で乱麻を断つように、明快に解決を与えた、私の友人の説明に、全く魅了されて傾聴した。
「先生、それからどうなされたのですか?」
検察官は訊ねた。
「私は種々の理由から、この Abe Slaney. と云うのは、亜米利加《アメリカ》人であろうと推定したのです。この Abe と云うのは元来、亜米利加《アメリカ》式の綴《つづり》にあるし、それに亜米利加《アメリカ》から来た、一通の手紙と云うのが、今回の大事件の端緒でしたからな。それに更に私は、この事件には、更にその中に伏在した、隠れたる犯罪があるに相違ないと睨む理由があったのです。つまり夫人が過去について、ちょっと仄めかしたあと、夫に対して絶対にそれを追求させなかったなどと云うことは、明かにそうした理由を暗示しているものだからね。それで私は、私の友人でニューヨークの警務局の、ウィルソン・ハーグレーブに、海底電信を打ってやったのです。この男はたびたび、私からお蔭を蒙《こうむ》っているものですがね、で私はこの男に、Abe Slaney と云う者を知っているかどうかと云ってやったのだが、その返電はこうだったので
前へ
次へ
全29ページ中22ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドイル アーサー・コナン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング