それは何事が起きたのだろうと、調べるために走り寄って来たのだった。事務室の戸の外に、兵士が二人いた。しかし彼等の鉄砲は装弾してなかったと見えて、発砲しなかった。そして彼等は銃剣をつけようとしている間に、うち殺されてしまった。こうして私たちは船長室に突進した。が、ちょうど私たちがその室《へや》のドアを引きあけた時、中から爆音がきこえて来た。そうして彼はその中で、テエブルの上にピンで留められてあった大西洋の地図の上にのめってい、その側《かたわ》らには煙の出ているピストルを持った教師が立っていた。また、二人の番兵は水夫たちに捕えられ、かくしてすべての仕事は仕末がついたように見えた。
広間はケビンのつぎにつづいていた。私たちはそこに集《あつま》って、長椅子に身をなげて、再び自由な身になったことを喜んで、気狂《きちが》いのように喜び合った。その部屋の周囲には戸棚がついていた。偽牧師のウィルソンは、そこからシェリー酒を引張り出して来た。私たちはその瓶の首をたたき落して、水呑コップに注いだ。そしてそれを呑もうとした瞬間、何の予告もなしに、私たちの耳に銃の響が聞え、客間はその煙で一ぱいになってテーブルを越して向うが見えなくなった。が、その煙がすっかりぬぐわれると、そこは恐ろしい修羅の巷《ちまた》と化していた。ウィルソンとその他の八人のものも、床の上をのた打っていた。そして血とテーブルの上にひっくりかえったシェリー酒との流れは、今でも私はその時の光景を考えると気持ちが悪くなるような様子で流れていた。
私たちは、それがもしプレンダーガストのためでなかったら、たぶん、もうその仕事をほうり出していたに違いないと思うほど、その光景を見ておどかされてしまった。しかしプレンダーガストは牛のように咆《ほ》えると、生き残ったものを従えて、戸口のほうに突進した。そして外に出ると、船尾のほうに中尉とそして十人のその部下がいた。彼等は私たちに発砲しようとしていたが、私たちはその前に彼等に跳《おど》りかかった。無論彼等もそれに抵抗したが、しかし私たちのほうが優勢であった。そうしてすべては五分間で終ってしまった。――おお、神よ、その船の如き人殺しの家が、未だかつてこの世にあったであろうか? プレンダーガストはまるで怒れる悪魔のようであった。彼は兵士たちをあたかも子供のようにつまみ上げると、生きていようと死んで
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