あいつなんか怖《こえ》えもんか。ここから四分の一マイルとねえ処に七十万ポンドって金があるんだ。青っ面《つら》をした大酒飲みの老いぼれ海員《けえいん》の――それも死んでる奴が怖えってって、そういう大金《てえきん》に尻《けつ》を見せて逃げるなんて分限紳士が、どこの世界にあるけえ?」
しかし彼の手下の者たちが元気を盛り返す様子は一向になかった。実際、むしろ、彼の言葉が死者に対して不遜なのにますます恐しがるようだった。
「止《や》めろよ、ジョン!」とメリーが言った。「幽霊に逆うなよ。」
その他の者たちに至っては皆すっかり恐しがって返事をすることも出来なかった。彼等はそれだけの勇気があったならてんでに逃げ出したことであろう。だが恐怖のために彼等は互に寄り合い、ジョンの大胆さが自分たちを助けてくれるかのように、彼のすぐ近くにいた。彼の方は、自分の弱気をかなりに抑えつけていた。
「幽霊だと? うむ、そうかも知れねえ。」と彼は言った。「だが、己には腑に落ちねえことが一つある。山彦《やまびこ》がしたな。ところで、影のある幽霊なんてだれも見たことがねえ。とすればだ、幽霊に山彦なんかあってどうするものか
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