は三度唾を嚥みこんでから、口を利き出したが、顔にはやはり極度に困りきった同じ表情を浮べていた。口を利くために口から短剣を取らねばならなかったが、しかしその他には彼は少しも動かずにいた。
「ジム、」と彼は言った。「己たちぁどうも料簡《りょうけん》がいけねえようだ、お前も己もな。で、仲直りしなけりゃなるめえ。船があんなによろけせえしなけれぁ、己はお前をつかめえたんだがな。だが己にゃあ運がねえんだ、まったくよ。己は降参しなくちゃならねえようだ。船長をしたこともある人間が、お前みてえな小僧っ子に降参するなあ、辛《つれ》えこったよ。なあ、ジム。」私は彼の言葉を面白がって聞きとれ、微笑し続けて、飼場の雄鶏のように得意になっていた。と、はっと思う間に、彼の右手が肩の後へ行った。何かが空気を切って矢のようにぴゅうっと飛んで来た。私は打たれた感じがしたかと思うと次には烈しい痛みを感じ、肩のところを檣に突き刺された。その瞬間の怖しい痛みと驚きとで――それは自分の意思でしたのだとは私はほとんど言えないし、意識した狙いはなしにやったのだと確信するが――私のピストルが二挺とも発射して、二挺とも私の手から離れた。
前へ 次へ
全412ページ中293ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
スティーブンソン ロバート・ルイス の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング