、今のように、この屠殺者の前に逃げ※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]ってばかりいる羊のような目に遭わなかったろうに?
彼は負傷してはいたが、素速く動くことは驚くべきほどで、彼の白髪《しらが》雑りの髪の毛は顔に振りかかり、その顔は焦心と憤怒とで英国商船旗のように真赤だった。私は自分のもう一挺の方のピストルを試してみる暇もなかったし、また、実際、役に立たないにきまっていると思ったので、試してみようという気持も大してなかった。ただ、一つのことだけは私にははっきりわかっていた。私はただ彼の前から逃げるだけではいけない。そんなことをしていれば、彼は、ちょっと前に私をもう少しで船尾へ追い込もうとしたように、じきにまた船首へ追い込んでしまうだろう。そうして掴まったが最後、あの九インチか十インチもある血塗れの短剣でぐざりとやられて、それがこの世の最後となるだろう。私は、かなりの大きさの大檣に掌をあてて、全神経を張りつめて待っていた。
私が逃げ※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]るつもりだということを見て取ると、彼も立ち止った。そしてしばらくの間は、彼の方は剣で打ってかかる真似をし、私
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