た。
「これが我々の執れる唯一の針路《コース》だとすれば、こうする他《ほか》はありませんね。」と船長が答えた。
「我々は潮に逆《さから》って漕いでいなければなりません。おわかりの通り、」と彼は言い続けた。「もしあの上陸所の風下へ流されたら最後、どこで岸に着けるかわかったものじゃありません。おまけに奴らの快艇《ギッグ》に襲われるかも知れないのです。しかし、こうして進んでおれば潮もだんだん弱くなるにきまっているし、そうすれば岸伝いにすぐに漕ぎ戻れますよ。」
「潮はもう弱って来ましたよ。」と艇首座に坐っていたグレーが言った。「舟をちっとは緩めてもいいでしょう。」
「有無う、君。」と私はまるでこれまで何もなかったかのように言った。吾々はみんな彼を味方の一人として遇することに心の中できめていたからである。
 突然船長がまた口を開いたが、その声が少し変っているように私は思った。
「あ、大砲!」と彼は言った。
「私もそのことは考えていました。」と私は言った。船長がきっと堡塁を砲撃されることを考えているのだと思ったからである。「奴らはとても大砲を陸に揚げることは出来ません。よしんばそれが出来たにしても
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