ない。というのは、私の信ずるところでは、ノアの方舟《はこぶね》此方これほど甘やかされた船員は決してなかったのだから。ちょっとした口実があっても、強い|水割りラム《グロッグ》が振舞われたりした。また、何でもない日に、例えば、大地主さんがだれかの誕生日だということを聞いたというような日などには、プディングが出た。それから、林檎の樽が一ついつでも中部甲板に蓋を開けたまま置いてあって、だれでも好きな者が勝手に食べられるようになっていた。
「こんなことからよいことが起ったというのは、まだ聞いたことがない。」と船長はリヴジー先生に言った。「水夫を甘やかすのは、彼等を悪魔にする。私はそう信じています。」
しかし、これからわかるように、よいことがその林檎樽から確かに起ったのである。というのは、もしその林檎樽がなかったなら、私たちは何の警告も受けることがなかったろうし、一人残らず叛逆の手にかかって殺されてしまったかも知れないのだから。
それは次のような次第であった。
私たちは、目指している島――私はもっとはっきり書くことは許されていない――の風上に出るために、これまでは貿易風について赤道の方へ走っ
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