なりません。しかし、ジム・ホーキンズは私の家《うち》に泊めるためにここにいさせたいと思いますから、御免を蒙って、冷《コールド》パイを取りよせて、ジムに夕食を食べさせたいのですが。」
「どうぞ、リヴジー君。」と大地主さんが言った。「ホーキンズは冷《コールド》パイなんぞよりももっといいものを手に入れたんだ。」
そこで大きな鳩パイが運ばれて側《サイド》テーブルに載せられ、私は鷹のように空腹だったので、たっぷり食べた。その間にダンスさんはなおいろいろとお世辞を言われて、やがて引下って行った。
「ところで、大地主さん。」と医師が言った。
「ところで、リヴジー君。」と大地主さんが同じ瞬間に言った。
「一時《いちどき》にゃ一人ずつ、一時にゃ一人ずつ。」とリヴジー先生が笑った。「あなたは今のフリントのことを聞いたことがおありでしょうな?」
「聞いたことがあるかって!」と大地主さんが叫んだ。「あるどころじゃないさ! あいつはこの上なしという残忍な海賊だった。黒髯《ブラックビアド》(註二二)だってフリントに比べれぁ子供みたいなものだった。スペイン人が彼をべらぼうに恐れておったので、私は、実際、時には彼がイギリス人であるのを自慢したこともあったくらいだよ。私はトゥリニダッド(註二三)の沖であいつの船の中檣帆《トップスル》をこの眼で見たことがあるが、私の乗っていた船の臆病船長の大馬鹿野郎めが引返したのだ、――引返したんだよ、君、スペイン港(註二四)へな。」
「いや、私も彼のことはイングランドで聞いたことがありますがね。」と医師が言った。「しかし要点は、彼は金《かね》を持っていたろうか? ということです。」
「金だって!」と大地主さんが叫んだ。「君はさっきの話を聞かなかったのかい? あの悪党どもの探し※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]っているのが金でなくて何だね? あいつらが金でなくって何をほしがるものかね? あいつらが碌でなしの命《いのち》を賭けるのは金でなくって何のためかね?」
「それはやがてわかるでしょう。」と医師が答えた。「だがあなたのように滅法に熱してしまって大声を出されては、私は一|言《こと》も口を出せませんよ。私の知りたいのはこういうことなんです。このポケットに私の持っているものが、フリントが宝を埋めた場所の何かの手掛りになるとして、その宝は多額のものだろうか? とい
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