ででございます、」とプールが言った。「私どもはみんなあの方のおっしゃる通りにしろと言いつけられております。」
「わたしはハイドさんと一緒になったことがないと思うが?」とアッタスンが尋ねた。
「ええ、ええ、おありではございませんとも、旦那さま。あの方は一度もここで御食事[#「御食事」に傍点]をなさいません、」とその召使頭が答えた。「実際、私どもはお屋敷のこちらの方であの方を滅多にお見かけしないのです。たいていは実験室の方から出入りなさいますから。」
「では、さようなら、プール。」
「おやすみなさいまし、アッタスンさま。」
こうして弁護士はひどく重苦しい心を抱いて家路についた。「気の毒なハリー・ジーキル、」と彼は考えた、「彼が苦しい羽目に陥っているのでなかろうかと気になってならない! 彼は若いときには放蕩をした。いかにも、それはずっと以前のことには違いない。だが、神さまの法律には、時効法なんてものはないのだからな。そうだ、そうに違いない。何かの昔の罪という亡霊か、何かの隠してある不名誉な行ないという癌なのだ。記憶が過ちを忘れてしまい、自分を愛する心が罪を許してしまってから何年もたってから
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