、それにはたぶん無意識のうちに幾らかの保留を残しておいたのであろう。なぜなら、私はソホーの家を引払おうともしなかったし、またエドワード・ハイドの衣服を放棄しようともせず、それをやはり書斎に用意しておいたからである。しかし、二カ月の間は、私はその決心に忠実であった。二カ月の間は、私は、それまでになかったほど謹厳な生活を送り、その報償として良心にほめられた。けれどう[#「けれどう」はママ]、時がたつにしたがってとうとう私の恐怖はその生々しさがだんだん失われるようになり、良心の賞讃もあたりまえのことのようになってきた。私は、自由を求めてもがいているハイドのそれのような苦悶と切望とに悩まされ始めた。そして、とうとう、道徳心の衰えている時に、もう一度あの変身薬を調合して飲んだのである。
 大酒家が自分の悪習について自分で理屈をつけるとき、彼がその獣のような肉体的無感覚のためにおかす危険のことを、五百度に一度でも気にかけることがあろうとは、私は思わない。私もまた自分の立場を永いこと考えてはいたけれども、エドワード・ハイドの主要な性格であるところの、完全な道徳的の無感覚と、いつでも悪を行おうとする狂
前へ 次へ
全152ページ中128ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
スティーブンソン ロバート・ルイス の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング