皆読むことができなかった。ダニエルが召されて、その文字を読み、王の治世の終りと国の分裂とを示すのであると言った。その予言はその後間もなく実現された。旧約聖書ダニエル書第五章に記されている故事である。
九九頁 逃遁の邑 古代ユダヤで誤って人を殺した者を庇護した町である。旧約聖書民数紀略第三十五章、ヨシュア記第二十章などに記されている。
[#ここで字下げ終わり]
[#改ページ]
解説
「ジーキル博士とハイド氏」は、単に固有名詞としてのみならず、二重性格[#「二重性格」に傍点]を意味する普通名詞としても亦、普く世界中に知られているくらいに、有名な小説である。原作の標題は[#ここから横組み]“The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde”[#ここで横組み終わり](「ジーキル博士とハイド氏の怪事件」)であって、ロバート・ルーイス・スティーヴンスン(一八五〇―一八九四)の一八八五年の作、翌一八八六年一月に初めて出版されたものである。
この作の創作過程については、既に種々の伝説[#「伝説」に傍点]が存在している。とにかく、「新アラビア夜話」及び「宝島」の出版によって初めて文学的名声を得たスティーヴンスンが肺患に悩みながらヨーロッパ大陸からイギリスに帰り、イングランド南海岸の保養地ボーンマスに父から買って貰ってスケリヴォーと名づけた家に病を養っている間、詩集「子供の詩の園」、長編小説「オットー王」などの脱稿の後、一八八五年、金の必要に迫られて、何か速く書き上げることのできそうな小説を頻りに考えている時に、或る夜見た夢[#「夢」に傍点]によって、この二重人格の物語を思い付いたのだという。その夢に関しても諸説があるが、彼が夢みたのは、恐らく、彼自身の言っているように、一人の男が戸棚の中に押しこめられている時に薬を飲んで他の人間に変ったという場面だけくらいのものであって、他は目覚めている時に構想されたのである。彼は友人との合作戯曲「執事僧ブローディー」、短篇小説「マーカイム」など類似の題目を過去において幾度か扱っており、人間の二重性を主題とした物語を書くことを以前から意図していたのであった。最初の草稿は烈しい勢で忽ち書き上げられた。それを彼の妻が読み、寓話であるべきものが幾分平凡な物語になっていて、寓意が明らかにされていないと非
前へ
次へ
全76ページ中74ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
スティーブンソン ロバート・ルイス の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング