《しゆご》するやうぢや。
婦人《をんな》は衣紋《えもん》を抱合《かきあ》はせ、乳《ちゝ》の下《した》でおさへながら静《しづ》かに土間《どま》を出《で》て馬《うま》の傍《わき》へつゝと寄《よ》つた。
私《わし》は唯《たゞ》呆気《あつけ》に取《と》られて見《み》て居《ゐ》ると、爪立《つまだて》をして伸上《のびあが》り、手《て》をしなやかに空《そら》ざまにして、二三|度《ど》鬣《たてがみ》を撫《な》でたが。
大《おほき》な鼻頭《はなづら》の正面《しやうめん》にすつくりと立《た》つた。丈《せい》もすら/\と急《きふ》に高《たか》くなつたやうに見《み》えた、婦人《をんな》は目《め》を据《す》ゑ、口《くち》を結《むす》び、眉《まゆ》を開《ひら》いて恍惚《うつとり》となつた有様《ありさま》、愛嬌《あいけう》も嬌態《しな》も、世話《せわ》らしい打解《うちと》けた風《ふう》は頓《とみ》に失《う》せて、神《しん》か、魔《ま》かと思《おも》はれる。
其時《そのとき》裏《うら》の山《やま》、向《むか》ふの峯《みね》、左右《さいう》前後《ぜんご》にすく/\とあるのが、一ツ一ツ嘴《くちばし》を向《む》け、
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