、こえ、こえ。)といひながら、気《き》だるさうに手《て》を持上《もちあ》げて其《そ》の蓬々《ばう/\》と生《は》へた天窓《あたま》を撫《な》でた。
(坊《ばう》さま、坊《ばう》さま?)
すると婦人《をんな》が、下《しも》ぶくれな顔《かほ》にえくぼを刻《きざ》んで、三ツばかりはき/\と続《つゞ》けて頷《うなづ》いた。
少年《せうねん》はうむといつたが、ぐたりとして又《また》臍《へそ》をくり/\/\。
私《わし》は余《あま》り気《き》の毒《どく》さに顔《かほ》も上《あ》げられないで密《そ》つと盗《ぬす》むやうにして見《み》ると、婦人《をんな》は何事《なにごと》も別《べつ》に気《き》に懸《か》けては居《を》らぬ様子《やうす》、其《その》まゝ後《あと》へ跟《つ》いて出《で》やうとする時《とき》、紫陽花《あぢさい》の花《はな》の蔭《かげ》からぬいと出《で》た一|名《めい》の親仁《おやぢ》がある。
背戸《せど》から廻《まは》つて来《き》たらしい、草鞋《わらじ》を穿《は》いたなりで、胴乱《どうらん》の根付《ねつけ》を紐長《ひもなが》にぶらりと提《さ》げ、啣煙管《くはへぎせる》をしながら並《な
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