りの死骸《しがい》は森《もり》の中《なか》の暗《くら》い処《ところ》、おまけに意地《いぢ》の汚《きたな》い下司《げす》な動物《どうぶつ》が骨《ほね》までしやぶらうと何百《なんびやく》といふ数《すう》でのしかゝつて居《ゐ》た日《ひ》には、酢《す》をぶちまけても分《わか》る気遣《きづかひ》はあるまい。
恁《か》う思《おも》つて居《ゐ》る間《あひだ》、件《くだん》のだら/″\坂《ざか》は大分《だいぶ》長《なが》かつた。
其《それ》を下《お》り切《き》ると流《ながれ》が聞《きこ》えて、飛《とん》だ処《ところ》に長《なが》さ一|間《けん》ばかりの土橋《どばし》がかゝつて居《ゐ》る。
はや其《そ》の谷川《たにかは》の音《おと》を聞《き》くと我身《わがみ》で持余《もてあま》す蛭《ひる》の吸殻《すひがら》を真逆《まツさかさま》に投込《なげこ》んで、水《みづ》に浸《ひた》したら嘸《さぞ》可《いゝ》心地《こゝち》であらうと思ふ位《くらゐ》、何《なん》の渡《わた》りかけて壊《こは》れたら夫《それ》なりけり。
危《あぶな》いとも思《おも》はずにずつと懸《かゝ》る、少《すこ》しぐら/″\としたが難《なん
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